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雑多な趣味のガラクタ小屋

雑多な趣味のガラクタ小屋

RUSH

RUSHロゴ



カナダ出身の超絶技巧派バンドにして最強のトリオである。まもなくデビュー30周年を迎える、そして未だに第一線で活躍し続ける「BAND OF THE BAND」である。しかし誠に残念なことに、日本での彼らの知名度は驚くほど低い。欧米ではROCK FANならば知らぬものなしのバンドであるにもかかわらずである。ひとつにはこれだけ長い活動歴の中で、来日したのはたったの1度だけなのである。1984年日本武道館において行われた公演のみである。もう18年も前のことなのです。観に行きました。感動しました。驚嘆しました。筆舌に尽くしがたいというのはまさにこのことであります。

 デビューは1973年、トロントのクラブでLED ZEPPELINに傾倒したHARD ROCKを演奏していた。そして、自主制作の「RUSH」でデビューした当時のメンバーは、
       GEDDY LEE(b,vo)
       ALEX LIFESON(g)
       JON RUTSEY(dr)
の3人で構成されていた。この当時はGEDDYとALEXが持ち回りで歌詞を書いていた。音楽性は、いまあるPROGRESSIVE HARD ROCKの雄といった面影はなく、前述したとおりLED ZEPPELINに傾倒した音作りであった。
 そして程なく、drのJON RUTSEYが脱退し、文学好きで、KING CRIMSON,YES,PINK FLOYDに傾倒していた一人の青年が変わってdrとして参加することになる。
 NEIL PEARTである。彼がこの後RUSHの歌詞のすべてを書くことになる。いまや、欧米で彼の歌詞を文学的に研究する文学者が多数存在しているが、よもやこの当時はそんなことになろうとは本人も思っていなかっただろう。
 それもそのはずで、ROCKにありがちな色恋沙汰の歌詞はまったくの皆無で、どちらかといえば社会風刺や大河物語を思わせるような大作が主で、こういったところからも他のバンドとは一線を画すところでもある。

【RUSH】1974
1. FINDING MY WAY
2. NEED SOME LOVE
3. TAKE A FRIEND
4. HERE AGAIN
5. WHAT YOU’RE DOING
6. IN THE MOOD
7. BEFORE AND AFTER
8. WORKING MAN

記念すべきデビューアルバムである。しかしリリース当時は自主制作盤であった。(後に再発された)日本でのCD発売は結構最近の事で1991年である。しかしマニアには貴重でそれまでは輸入盤それもアナログ盤でしか手に入らなかった。
さて、このデビューアルバムは唯一drがNEIL PEARTではない。JON RUTSEYという人だがはっきりしたことは何もわからない。
彼の脱退の理由はハードスケジュールの中での体調不良と音楽性、人間性の相違だそうである。
アルバム全体としては、ごく一般的なハード・ロックで曲のタイトルを見てもらっても解かるとおりまだまだ稚拙で未完成な観が否めない。なんといってもまだ二十歳ごろの作品である。荒削りであるのは仕方のないところであろう。

【FLY BY NIGHT】1975
1. ANTHEM
2. BEST I CAN
3. BENEATH, BETWEEN & BEHIND
4. BY-TOR & THE SNOW DOG
 ⅰ AT THE TOBES OF HADES
 ⅱ ACROSS THE STYX
 ⅲ OF THE BATTLE
 ⅳ EPILOGUE
5. FLY BY NIGHT
6. MAKING MEMORIES
7. RIVENDELL
8. IN THE END

現在のRUSHの実質的にデビューアルバムだろう。まず1曲目から前作の雰囲気とまったく変わってしまっている。ドラムスが手数が多くなってリズムパターンが多彩になり、曲中にリズムの変化が見られるようになる。よりハードになりつつも、少しずつRUSHらしさが現れてきているように思う。何よりも4曲目の「BY-TOR & THE SNOW DOG」で、さっそく組曲形式の楽曲が現れた。初期のもっとも顕著な傾向である。3曲目の「BENEATH,BETWEEN & BIHIND」にいたっては未だにライブで演奏される曲である。ここではまだ全曲NEILによる作詞ではないが(「BEST I CAN」「IN THE END」はGEDDYによる)かなり影響が感じられるものとなっている。
作詞を持ち回りでやっていたGEDDYとALEXは、いつも本を抱えているNEILを見て
「こいつ頭良さそうじゃん」
みたいなノリで頼んだところ、NEILは嵌ってしまった。というのが経緯らしい。
前作ではリミックス担当であったTERRY BROWNが共同プロデュースで名を連ねている。

【CARESS OF STEEL】1975
1. BASTILLE DAY
2. I THINK I’M GOING BALD
3. LAKESIDE PARK
4. THE NECROMANCER
 ⅰ.INTO DARKNESS
 ⅱ.UNDER THE SHADOW
 ⅲ.RETURN OF THE PRINCE
5. THE FOUNTAIN OF LAMNETH
 ⅰ.IN THE VALLEY
 ⅱ.DIDACTS AND NARPETS
 ⅲ.NO ONE AT THE BRIDGE
 ⅳ.PANACEA
 ⅴ.BACCHUS PLATEAU
 ⅵ.THE FOUNTAIN

なんとこのアルバム前作からわずか4ヵ月後にレコーディングを始めている。よほど創作意欲が刺激されたのであろうか、前作よりもさらによく練りこまれた音作りがなされている。ライブを前提に構成、アレンジがされていることが基本らしいので、余分なオーヴァー・ダブはされていない。
アナログ盤のときはB面が5曲目1曲のみである。本領発揮である。一大叙事詩が展開されている。しかし、他のプログレバンドとは一味違い、クラシック的なアプローチではなくあくまでロック的アプローチで作られていることが特徴的である。詩のほうも哲学的、教訓的なものとなって、18世紀文学の影響が色濃く出始めたところだ。

【2112】1976
1. "2112"
 ⅰ. OVERTURE
 ⅱ. THE TEMPLES OF SYRINX
 ⅲ. DISCOVERY
 ⅳ. PRESENTATION
 ⅴ. ORACLE : THE DREAM
 ⅵ. SOLILOQUY
 ⅶ. GRAND FINALE
2. A PASSAGE TO BANGKOK
3. THE TWILIGHT ZONE
4. LESSONS
5. TEARS
6. SOMETHING FOR NOTHING

これまでの3作品が商業的成功に結びついていなかったことで、レーベルからのプレッシャーを受けながらこの作品は創られた。
女流SF作家のAYN LANDの作品からヒントを得て創られたのが1曲目の”2112”である。全部で21分弱の大作である。展開そのものは飽きることなく聴くことが出来る。歌詞もちょっとした社会風刺を含んだ内容となっている(その当時より今のほうがわかりやすいかもしれない)。
因みに日本デビュー作は本作である。この頃はGEDDYのハイトーンヴォイスと厚めの音作りということで、へヴィー・メタルになっていたように思います。(違った意味での様式美がありますからね。)

【A FAREWELL TO KINGS】1977
1. A FAREWELL TO KINGS
2. XANADU
3. CLOSER TO THE HEART
4. CINDERELLA MAN
5. MADRIGAL
6. CYGNUS X-1
  BOOK ONE - THE VOYAGE

このアルバムからシンセサイザーが登場する。前作がエフェクト的な使用にのみ終始したことを考えると、このアルバムでは明らかに演奏と言う形をとっている。そして何よりもシンセがなっているときにはちゃんとベースペダルの音がなっているという徹底振りだ。ステージ上でGEDDYが一人何役もしながらの演奏形態になるのはこの頃からで、ベースを弾き、キーボードを弾き、フットペダルを駆使しながらヴォーカルをする。サポートメンバーを入れないのも彼ららしいと言えば言えなくもない。
一方、NEILにも変化が見られる。明らかにパーカッション・アイテムが増えている。オーケストラ・ベル、ウッドブロック、カウベルの数も増えている。そうして段々とドラムスのセットが周りを覆い始めている。
ALEXはというとますますギターに磨きがかかってきている。プレイもそうだがコード進行やリフの展開など独自のものを感じさせる。
こうしてRUSHは他のどのバンドにも似ていない独自の世界観を広げていくのである。

【HEMISPHERE】1978
1. CYGNUS X-1 : BOOK TWO - HEMISPHERE
 ⅰ. PRELUDE
 ⅱ. APOLLO Bringer of Wisdom
 ⅲ. DIONYSUS Bringer of Love
 ⅳ. ARMAGEDOON The Battle of Heart and Mind
 ⅴ. CYGNUS Bringer of Balance
 ⅵ. THE SPHERE A Kind of Dream
2. CIRCUMSTANCES
3. THE TREES
4. LA VILLA STRANGIATO (An exercise in Self-Indulgence)
 Including
 ⅰ. BUENOS NOCHAS, MEIN FROINDS!
 ⅱ. TO SLEEP, PRECHANCE TO DREAM...
 ⅲ. STRANGIATO THEME
 ⅳ. A LERXST IN WONDERLAND
 ⅴ. MONSTERS!
 ⅵ. THE GHOST OF THE ARAGON
 ⅶ. DANFORTH AND PAPE
 ⅷ. THE WALTZ OF THE SHREVES
 ⅸ. NEVER TURN YOUR BACK ON A MONSTER!
 ⅹ. MONSTERS!(REPRISE)
 ⅹⅰ. STRANGIATO THEME(REPRISE)
 ⅹⅱ. A FAREWELL TO THINGS

ご覧のとおり前作の最後の曲の第2章からこのアルバムは始まっている。そして組曲形式の曲作りもこのアルバムを以って終了となる。というのもNEILの文学的興味の対象が18世紀装飾文学から、20世紀アメリカ文学へと変わってきたからである。より簡素化された文によって自らの哲学を表現することへ志向が変化をしていく過渡期の作品とも言える。その置き土産として18分にも及ぶ大作が収められたこの作品は、もうひとつの新しい挑戦がある。4曲目の「LA VILLA STRANGIATO」はRUSH初のインストルメンタルである。その当時における演奏技術、作曲能力、アレンジ能力すべてを出し切っていると言っても過言ではない至極の1曲である。パートが12に分けられているが曲調が少しずつ変化していくのが良くわかる。
ここで少し、当時の彼らの使用機材を見てみると、

ALEX LIFESON
 6 & 12 string electric & acoustic guitars, classical guitar, Roland guitar synthesizer, Taurus pedals

NEIL PEART
 drums, orchestra bells, bell-tree, tympani, gong, cowbells, temple blocks, wind chimes, crotales

GEDDY LEE
 bass guitar, Mini-Moog, Oberheim polyphonic, Taurus pedals, vocals

【PERMANENT WAVES】1979
1. THE SPIRIT OF RADIO
2. FREEWILL
3. JACOB’S LADDER
4. ENTRE NOUS
5. DIFFERENT STRINGS
6. NATURAL SCIENCE
 ⅰ. TIDE POOLS
 ⅱ. HYPERSPACE
 ⅲ. PERMANENT WAVES

この頃には不動の人気を誇り、歌詞の文学的研究者まで登場する熱狂振りで英米ではフリークスが登場するほどであったが、如何せん日本ではその歌詞の文学的なものが伝わりにくいこともあるのかもしれないが、未だにメジャーではないのがなんとも歯痒い。音楽的なものだけでも充分な魅力があるとは思いますが、ルックスも飛びぬけて良いわけでもないけれどもう少し知っている人がいてもいいのではと思います。
このアルバムは、英米ではチャートを賑わしていてようやくビッグネームの仲間入りを果たした作品と言える。常に自分たちのやりたい音楽を作ると言う姿勢で、思いが純粋であるがために他とはちょっと一線を画すバンドですが、そういう特異性がまた違った意味のフリークを生むことにもなっているようです。

【MOVING PICTURES】1981
1. TOM SAWYER
2. RED BARCHETTA
3. YYZ
4. LIMELIGHT
5. THE CAMERA EYE
6. WITCH HUNT (PART Ⅲ OF FEAR)
7. VITAL SIGNS

おいらのRUSHの入り口となったアルバムである。
変拍子を多用していてそれでいて曲の流れがスムーズで、手数の多いドラムとそれにジャストフィットのベースライン、その上で縦横無尽に展開するギターと、最高のアンサンブルを聞かせてくれる。特にインストルメンタルの「YYZ」は、ライブでは必ずドラムソロのパートが入る定番の曲として、ファンの間では最も盛り上がる曲の中の1曲で、最初のトライアングルがなった時点で大歓声となること請け合いである。
これまでに比べてややポップになってはいるけれど、それも時代の流れの中で自分たちが今何を求め、どう表現することが正しいかと言うことをストレートにあらわしているのがその時々のRUSHの作品群であると考えている。デビュー当時から考えると、ヘビーメタル的な側面が薄れて、最新の機材を駆使した、3人で表現出来得る最先端の音作りとでも言おうか。至高の詩の数々と、相まって着実に進化して行っているのだ。

【SIGNALS】1982
1. SUBDIVISIONS
2. THE ANALOG KID
3. CHEMISTRY
4. DIGITAL MAN
5. THE WEAPON
6. NEW WORLD MAN
7. LOSING IT
8. COUNTDOWN

このアルバムでは、今までのものに比べると圧倒的にシンセサイザーの比率が多くなってきている。かといってベースプレイが影を潜めたかと言うとそんなことはなく、今まで以上にバリバリ鳴っている。ギターが押さえ気味に巧みなコード進行の上に、音空間の広がりをシンセとの相乗効果である意味今までよりも豊かな音の広がりを見せているのが面白い。ドラムのリズムそのものは相変わらずであるが、ややシンプルになってタム回しで微妙なリズムを作っているような感じがしている。ギターソロにしても今までのように速弾き主体ではなく空間を包み込むような感じである。
コンセプトとしては、「現代にある未来」というか、飛躍の可能性であったり、問題提議であったり。その時々で鋭い目を持って現代を切り裂いているような感じであろうか。決して重くなくかといって何かを考えさせる側面を必ず持った罠を巧妙に仕掛けている。NEILの世界に引っ張り込まれて彷徨っているような感覚にさえなってくる。この当時ではなく、今このとき21世紀に入って尚、このアルバムの歌詞の意味するところが見えてくる。

【GRACE UNDER PRESSURE】1984
1. DIATANT EARLY WARNING
2. AFTERIMAGE
3. RED SECTOR A
4. THE ENEMY WITHIN
5. THE BODY ELECTRIC
6. KID GLOVES
7. RED LENSES
8. BETWEEN THE WHEELS

デビュー以来、第4のメンバーとされていたプロデューサーのTERRY BROWNの名前がこのアルバムからは消えている。変わってPETER HENDERSON(スーパー・トランプ、クライマックス・ブルース・バンドなどAOR系を得意とする)の名前がクレジットされている。
音的にはどうかというと、前作から引き続きシンセサイザーを前面に押し出したサウンドコンセプトは変化はない。しかし今作からシーケンサーが導入されている。そしてドラムセットも本格的にシンセサイザードラムが登場する。ドラムのスタイルも、シーケンサーのおかげでリズムは幾分シンプルになってきてはいるものの(変拍子は相変わらずであるが)、ドラムそのものは他にあまり見られないようなスタイルに変わってきている。縦横無尽に360度にセッティングされているドラムセットを駆使してフィルインでなくリズムを刻むことに積極的になって、逆にギターソロが減っている。そうすることによって曲全体が変化に富んだものになっているように思う。リズム主体の分厚い音になってきている。とてもトリオとは思えないほどに。
付け加えておくと、このアルバムが出された1984年にRUSHは来日公演を行っている。そのときが最初でそれ以来実現していない。残念なことであるが・・・。

【POWER WINDOWS】1985
1. THE BIG MONEY
2. GRAND DESIGNS
3. MANHATTAN PROJECT
4. MARATHON
5.TERRITORIES
6. MIDDLETOWN DREAMS
7. EMOTION DETECTOR
8. MYSTIC RHYTHMS

共同プロデューサーがまた変わり、PETER HENDERSONからPETER COLLINS(ニック・カーショウ、トレイシー・ウルマンその後ゲーリー・ムーア、タイガーズ・オブ・パンタンなどを手がける)に変わった。新しい環境から新しいものを生み出そうとするRUSHの前向きな姿勢からのことと言うことだ。【SIGNALS】【GRACE UNDER PRESSURE】とギターが曲の中に溶け込んであまり目立たなかったが、このアルバムではまた前面に押し出されてよりパワーアップした印象になっている。アルバムごとに何かしら変化をつけて我々を楽しませてくれる。今まで以上に曲の構成がすっきりしてシンプルになったように聴こえるが、聴き込んで行くと歌詞のパートごとに、曲のパートごとにリズムや曲調が微妙に時には大胆にアレンジを変えていて、聴き様によってはこれまでよりも複雑になっているかもしれない。
歌詞にいたっては、益々シンプルな単語を使うようになってきてはいるが、そのあらわすところは痛烈な風刺になっていたり、暗喩が含まれた深い意味を持つものとなっている。これまで以上に深い観察力と洞察力によってシャープな表現となってきているようだ。

【HOLD YOUR FIRE】1987
1. FORCE TEN
2. TIME STAND STILL
3. OPEN SECRETS
4. SECOND NATURE
5. PRIME MOVER
6. LOCK AND KEY
7. MISSION
8. TURN THE PAGE
9. TAI SHAN
10. HIGH WATER

このアルバムでは3人が各々のプロダクツ、すなわち楽器をこれまで以上にパワーアップし極めるために努力を続けると言う原点に立ち返った姿勢を見せているところが興味深い。確かにこれまでの3作品に比べると各パートが自由にのびのびと演奏されているのが聴いて取れるようだ。さらにはヴォーカルが円熟味を増してきたとの評もあるように、以前のようにハイトーンでシャウトするようなことはなくなり、どちらかといえば中音域で語りかけるような歌唱法に変わってきている。そしてもうひとつ、このアルバムから、コーラスを入れるようになったが、GEDDY自らがコーラスをしていることである。(前作ではゲストヴォーカルが招かれていた。)それによってヴォーカルパートも情感豊かになり、歌詞の重要性を今更ながらに際立たせている。
RUSHというジャンルを構築したのだ。

【PRESTO】1989
1. SHOW DON’T TELL
2. CHAIN LIGHTNING
3. THE PASS
4. WAR PAINT
5. SCARS
6. PRESTO
7. SUPERCONDUCTOR
8. ANAGRAM(for Mongo)
9. RED TIDE
10. HAND OVER FIST
11. AVAILABLE LIGHT

このアルバムではプロデューサーがRUPERT HINE(キャメル、フィクス、ハワード・ジョーンズ、サーガそしてティナ・ターナー、スティーヴィー・ニックスなどを手がける鬼才)と組んでいる。それにしてもRUSHは単独でプロデュースしたことは今まで一度もない。なぜだろう?これは勝手な仮説であるが、彼ら3人があまりに完璧主義であるがゆえに、ことプロデュース作業となると客観的なものの見方をしづらくなるために、第三者として一歩引いたところから見てくれる人間を必要としているのではないだろうか。まず曲が出来てからレコーディング前にかなりの間リハーサルを繰り返しているらしいので、その先の作業が誰かいたほうがスムーズに運ぶことも考えられる。
さて今作であるが、シンセサイザーがかなり独立してきている。バッキングの要所で効果的に使われている程度になっている。あくまでトリオはギター、ベース、ドラムであると言わんばかりである。そしてそれだけで音空間を埋め尽くすほどのアレンジ力で聴くものを圧倒する、ある種達観してきているのかもしれない。アルバム全体からは、1曲の長さは5~6分ほどであるが統一性がないわけでなくかといって特徴が似通っていると言うものではない。秀逸なのだ。

【ROLL THE BONES】1991
1. DREAMLINE
2. BRAVADO
3. ROLL THE BONES
4. FACE UP
5. WHERE’S MY THING ?
(PART Ⅳ,"GANGSTER OF BOATS"TRILOGY)
6. THE BIG WHEEL
7. HERESY
8. GHOST OF A CHANCE
9. NEUROTICA
10. YOU BET YOUR LIFE

また少しシンプルになったようだ。というよりも派手な装飾を出来るだけ排除して、どちらかと言うとミドルテンポのグルーヴ感をより意識しているように感じる。ここのところの傾向であったが、このアルバムではアコースティック・ギターがかなりフィーチャーされている。そして何よりもプロダクツの表示がこれまでになくシンプルになって、シンセサイザードラムはついに姿を消してしまった。その上でこの音の厚さである。サウンドの構築にさらに磨きがかかったと言えるだろう。ミュージシャンとして純粋に楽器の演奏への欲求と情熱がここでまた具現化することになる。インストルメンタルが新たに1曲生まれた。"WHERE’S MY THING?"「あれはどこにいった?あれだよあれ・・」みたいなニュアンスだろうか。なかなか粋なタイトルである。
それ以外にも、歌詞の面では現実へのアンチテーゼや未来への危惧、継承、希望と言った我々あるいは自分たちへの提言のような内容が多くなってきている。英語そのもののニュアンスを汲み取れないのが残念でならない。

【COUNTERPARTS】1993
1. ANIMATE
2. STICK IT OUT
3. CUT TO THE CHASE
4. NOBODY’S HERO
5. BETWEEN SUN & MOON
6. ALIEN SHORE
7. THE SPEED OF LOVE
8. DOUBLE AGENT
9. LEAVE THAT THING ALONE
10. COLD FIRE
11. EVERYDAY GLORY

ここ最近のアルバムの中で一番ハードなアルバムである。今までのサウンド作りにおいて抑えてきたROCKへの情熱が一気に爆発したような感じである。前作でもその片鱗は見え隠れしてはいたが、ここまでハードになるとは思ってもいなかった。かといってヘビメタのような音作りかというとそういった方向性ではない。今までのギターサウンドに若干きつめにディストーションをかけている程度である。そうではなくどちらかと言えば、全体のバランスからしてベースが一歩前に出てきた感じであろうか。
DREAM THEATERなどネオ・プログレッシブ・ハード・ロックといわれるメタルよりのサウンドで、RUSHを師と仰ぎ、公言して憚らないもの達へ、「元祖はこうだよ。」といわんばかりの、貫禄のようなものを感じる。年齢的には40代に入ったばかりの3人である。円熟味も増して、まだまだパワーアップの可能な世代である。というよりは脂が乗り切っているのである。デビュー20周年の節目の年でもあるので、時代に対応しつつ原点を見つめたのかもしれない。後戻りは決してしないバンドだから。

【TEST FOR ECHO】1996
1. TEST FOR ECHO
2. DRIVEN
3. HALF THE WORLD
4. THE COLOR OF RIGHT
5. TIME AND MOTION
6. TOTEM
7. DOG YEARS
8. VIRTUALITY
9. RESIST
10. LIMBO
11. CARVE AWAY THE STONE

90年代に入ってアルバムを出すごとに音が厚く重くなってきている。ギターのエフェクトのかけ方、ベースのバランスなど、これまでとは明らかに変わってきている。NEIL PEARTの紡ぎだす詩の世界は、益々洗練されより直接的に、より辛らつに我々に語りかけてくる。心の片隅で現実の世界を憂いているように受け取れるのは錯覚ではないはずである。その歌詞の数々をよりハードでパワフルな曲に載せて迫ってくるのだから圧倒される。
そして、NEIL PEART自身による解説「TEST FOR ECHO 公式ガイドブック及びユーザーズ・マニュアル」と題されたものを見てみると、レコーディングの過程を赤裸々に語られていて、こういったものを見るのもマニアとしてはうれしい限りである。楽しんで制作に励んでいるのが良く伝わってくる。

【VAPOR TRAILS】2002
1. ONE LITTLE VICTORY
2. CEILING UNLIMITED
3. GHOST RIDER
4. PEACEABLE KINGDOM
5. THE STARS LOOK DOWN
6. HOW IT IS
7. VAPOR TRAIL
8. SECRET TOUCH
9. EARTHSHINE
10. SWEET MIRACLE
11. NOCTURNE
12. FREEZE (Part Ⅳ of "Fear")
13. OUT OF THE CRADLE

6年ぶりのアルバムである。なぜこのようなブランクがあったかというと、ドラマーで詩人のNEIL PEARTの一人娘が97年に交通事故で他界。翌年には妻が癌で亡くなるという相次ぐ不幸に見舞われ、音楽活動を続けることが出来ないほどに打ちのめされたことに起因している。メンバーチェンジ、解散といった雑音に惑わされることなく、他の二人はNEILの回復を待っていた。
世紀をまたいで、満を持してとうとうリリースされたこのアルバムは、シンセサイザーの表記がなくなっている。純粋にトリオとして、ミュージシャンとして曲作りに対峙したということなのだろうか、これまでの延長線上にあるがさらに重く、厚く、パワフルになっている。50代を目の前にして益々若々しいプレイが聴けたことはうれしい限りである。
詩の世界は、やはりこれまでの経緯からか、そしてまた9・11のことも影響しているのかもしれないが、以前とは違って内向的な詩になっているようだ。直面した悲劇を癒すためにかなりの期間を旅に費やしたのであろうか、自然からのインスピレーションがかなり見られるのも特徴だろう。
RUSHが我々の前に戻ってきたのである。


この項は終了である。途中ライブ盤が節目節目でリリースされているのであるが、この場では割愛しました。ただ闇雲に出されているわけではなく、それぞれに意味があって制作されているので、それについてはまた別枠でやりたいと考えています。
長々とお付き合いいただいた方々、興味が湧いたならばぜひ聴いてはまり込んでみるのもよいのではないでしょうか。お薦めです!!


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